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Wat's your name?

【そのままの君でいて】

「ちょっと、ノボリさん!」
「はい」
「お客さんに技をくらわせてどうするんですか!」
「とうぜんの結果でございましょう? 彼らは、あなたさまを中傷しました。ゆえに、おしおきをしたまでにございます」

 いや、そういうことが言いたいわけではなく。

「こんなことはなれてますから、お気になさらず。それよりも、お客さんにケガをおわせるほうが、大問題です!」
「わたくしにとっては、あなたさまを泣かせたことのほうが、大問題です」

 別に泣いてないし。ていうか、なにその発言。まるで私のことを好きだって、言ってるみたいじゃない。

「泣いてません。それに、今はバトルのさいちゅうなんですよ? きちんと職務をこなしてください」
「心のなかでは、泣いているでしょう?」
「泣いてません! 職務をきちんとしろと言ったのはあなたでしょう! 私情を持ちこまないでください!」

 こっちは必死になって私情を持ちこむまいとしていたのに、なんなのよ!

「ごぞんじだとは思いますけど、私、ノボリさんもクダリさんも嫌いですから。同情とか、ほんとやめてください」
「同情でしたら、もっとあわれみをこめます。少なくともわたくしは、あなたさまに同情などしたことは1度も…」
「そうですか? 私には同情もあわれみも、同じにしか思えませんけど」

 結局は私が女だからってだけで、かよわいだの守らなきゃいけないだのって、勝手な偏見でしばりつけているだけじゃないか。

「とにかく、もうこういうことはやめてください!」
「…わかりました」

 つぎの瞬間、なにがおこったのか、さっぱり理解ができなかった。
 突然目前にせまってきた黒に、唇にふれたやわらかくあたたかい感触。キスされたと理解するまでに、数分を要した気がする。
 わけがわからず、こんらんする頭のまま、停車した車両から逃げるように走りだした──。



「はあ、はあ…」

 あがる息もそのままに、ライモンの外、ホドモエのはねばし付近にあるベンチに腰を落ち着ける。

(なにが、おきたの…?!)

 ゆっくりと深呼吸をし、考える。だけど、考えれば考えるほど、理解に苦しむ。

(私は、ノボリさんのことが嫌いで、向こうも私を部下くらいにしか思ってないはずで…)

 キスなんてされるいわれも、理由もないはず。

(なんなの、あれは…)

 深い意味は、ないのかもしれない。だけどもし深い意味があるのだとしたら、話は変わってくる。

(ありえない…)

 自慢じゃないけど、私は性格が悪いほうだ。誰かに嫌われることはあっても、好かれるなんてありえない。
 よって、ノボリさんやクダリさんに好かれている可能性なんて、これっぽっちも考えたことはない。

(だいたい、サブウェイマスターともあろう人が、ましてやあれだけ顔のいい人がよ? 私なんか相手にするわけない)

 だからきっと、あれはただの気まぐれだ。そうに違いない。
 そう自分に言いきかせ、ギアステーションへと戻った──。





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