N log
長期間ログインされておりません
[PR] 広告主様募集


Wat's your name?

【はた迷惑な照れかくし】

「ほら、簡単。デショ? あのねー、ノボリはきみが初めてライモンにきた日に、会ってるんだよー」
「え? …あ、そういえば道案内してくれた人が、ノボリさんに似てるかも…」
「そう、それ。でね、きみの笑顔に惚れちゃったんだって!」

 ……なんですか、それは……。

「もっ、もうやめてくださいまし…! は、はずかしい…!」

 うわ、ノボリさん顔まっかだ……。純情なのかまじめなのか、それとも両方なのだろうか。

「デネ、きみがここで働くって決まって、でも声がかけられなくて悩んでたの! そしたらこのあいだ、きみが足をくじいてて、やっと声をかけたんだって!」
「やめなさい、クダリ…!」
「…なるほど、それで今にいたる、と」
「そう! きみだって、好きな人のこと、気になるデショ?」
「…でも、いきなりロッカーにお弁当はおかないですね」

 ショックを受けたのか、ノボリさんの顔が、いっきに青ざめる。

「そういうの、普通の女の子はよろこぶと思います。ただ、あいにくと私は自分でいうほど普通ではないので、びっくりしましたけど…」
「うれしくなかった?」
「そうではなくて、差出人不明の荷物は、受け取れないということです。差出人がはっきりしているなら、うれしい…ですよ」
「じゃーさ、これからはノボリがきちんと手渡したら、よろこぶ?」
「…ええ、まあ、そうですね…。でも、お付き合いとかは話が別ですよ、先に言っておきますけど」

 私はまだ、ノボリさんをよく知らない。好きかどうかなんて、わからない。

「じゃ、まずはお友達から、だね!」
「上司なんですけど…」
「いいじゃない。プライベートとお仕事は別、でしょ?」
「ええ、まあ…」
「はい、もうお友達!」

 と、クダリさんが私の手とノボリさんの手をあくしゅさせる。と同時に、ノボリさんの顔がふたたびまっかになった。

(…わかりやすいな。おもしろい…)



 ノボリさんは本当に毎日、お弁当を作ってきてくれた。休みの日は会わないから、休みの日以外は、毎日。それがまたおいしくて。

(今日はお休みだし、たまには、いつもお弁当を作ってきてくれるお礼でもするか)

 ふだんはあまりしない料理にあくせんくとうしながらも、なんとか形にはなった。それを大きなお弁当箱につめて、ノボリさんを訪ねる。

「どうしました?」
「お昼、まだですか?」
「クダリが作ってくれたので、今から…」
「あ、えと…」
「…その手に持っているのは…?」

 あわててかくしたけれど、かくしきれるはずもなく。

「あっれー、名前ちゃん! それなーに?」
「あ、えっと…その…」
「くんくん…いい匂いするね! わかった! お弁当! 大丈夫! ノボリなら食べれる!」
「ええ、名前さまが心をこめて作ってくださったのです! 食べないわけがありませんとも!」

 と、なかにうながされる。

「でも、クダリさんが作ったって…」
「ぼくの料理は、夜でも食べれるよ! でも、きみのは今食べないと、持って帰っちゃうでしょ?」
「クダリのまずい料理なぞ、食べた気がしません」
「ノボリまずいって言ったー、ぶー」
「じゃ、じゃあ…」

 なんだかもうしわけないやらはずかしいやら、複雑な気分でお昼を食べた──。





- XRIE -