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Wat's your name?

【否定したって曲げられない虚】

「ただいまー」
「…今日の報酬は?」
「これだけ。たいした仕事じゃなかったし、報酬も安かった。やっぱ、ノボリ行かないで正解。ノボリがでるほどの仕事じゃない」
「…そうですか。夕食はどうします? もうできてますが…」
「食べるー。お腹ぺっこぺこ! ほんと、運動するとお腹すくね!」

 わたくしたちの仕事は、表向きはただのサブウェイマスター。ですが、裏ではいわゆる"掃除屋"、"スイーパー"と呼ばれる仕事をしている。

「あ、あと、これ。つぎのターゲットだって。かわいい子だよ」

 クダリ……双子の弟がほうってよこした写真には、わたくしたちとさして変わらない年齢であろう女性が、ほほえんでいた。

「依頼の内容は?」
「その子の父親、あのロケット団の幹部。で、その子の父親にだいじなポケモン奪われた娘さんが、ショックで自殺しちゃったんだって」
「そのうらみをはらしたい、と…?」
「うん。…この子もかわいそうにね。親を選べなかったがために、自分が殺されるハメになるなんて」

 そう言いながら、クダリは非常にたのしそうに笑う。わが弟ながら、殺すという行為そのものをたのしんでいるクダリは、本当におそろしい。

「明日、依頼人と接触することになったから」
「何時にです?」
「昼11時。明日なら、ノボリ遅番デショ? 変わりに行ってきて」
「わかりました。あなたは、きちんとお仕事に行ってくださいましね?」
「…はーい」



 翌日、依頼人と接触し、依頼をうける。報酬は前払いだということなので、今回はぜったいに、失敗は許されない。……いえ、失敗などしませんが。

「わっ!」

 遅番で午後ギアステーションにむかったわたくしは、うしろからの衝撃に、驚いてふり返る。

「あ、ごめんなさい! うちのミジュマル見ませんでしたか…って、サブウェイマスターのノボリさんじゃないですか!」
「はい、ノボリにございますよ。…それで、ミジュマルがどうなさいました?」

 まさにアクシデントです。本来ならターゲットとは接触してはいけないはずが、偶然とはいえ……接触してしまうなど……。

「急にボールから飛びだしたと思ったら、どこかに行ってしまって…。いつもはきちんと言うこと聞いてくれる子なのに、なにか気に入らなかったのかな…」
「一所にお探ししますから、そのようなお顔をなさらないでくださいまし。あなたさまのような女性には、笑顔のほうがお似合いにございます」
「え、でも! ノボリさんお忙しいでしょう? 1人はなれてますし、だいじょうぶですよ!」

 笑顔で言う彼女に、なにかわからないが、なにかが胸にささった。

「いえ、今なら時間もありますし、お手伝いさせてくださいまし」
「でも…」
「では、まいりますよ」

 なかば無理やりお客様の手を引くなど、普段のわたくしならありえないことにございます。ですが、このかたを見ていると、なにかわからないのですが……手だすけをしたくなってしまったのです。

(どうかしている…)

 そう自分を叱責しながらも、わたくしは自分の気持ちをおさえることができなかった──。





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