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Wat's your name?

【人殺しに情けはいらぬ】

「ノボリ、なに考えてんの? なんでターゲットと接触したの?」
「…すみません…」

 ああ、イライラする。ノボリはぼくのもの。ぼくだけのノボリ。この暗い世界で、ぼくにはノボリしかいないし、ノボリにはぼくしかいない。
 ……なのに! よりにもよって殺さなきゃいけない女に、このあいだから、何度も接触していたっていうじゃないか!
 ノボリは、誰にもわたさない! ノボリはぼくだけのものだ!

「…っ、いけない…!」

 本気で首をしめてしまっていたことに気づき、あわててノボリの首から手をはなす。

「…げほっ、げほっ…!」
「ごめんね、苦しかったよね…」

 ぎゅううっと、ノボリに抱きつく。

「でも、ノボリがいけないんだからね! ノボリは、ぼくだけ見てればいいのに!」
「…すみません…」
「あやまるなよ! …もういい。ノボリ、これ」

 幻覚剤をしこんだ飲み物を飲ませ、ベッドに手錠でノボリをつないだ。

「ク、ダリ…に、を…!」
「ちょっとここにいてよ。ぼく、用があるから。すぐに帰ってくるから、いい子にしてるんだよ?」

 ノボリの制服に着替えると、口を引きむすぶ。こうすれば、誰もぼくがクダリだとは思わない。
 まっすぐにギアステーションに向かうと、ノボリっぽく、敬語であいさつをかわす。道行く人は誰も、ぼくがノボリだと信じてうたがわない。

「おはようございます」
「おはようございます、ノボリさん!」

 ぱあっと輝いた笑顔で近寄ってくる女。……こいつが、ぼくからノボリをうばおうとしてるやつか。

「今日も、いらしてくださったのですね」

 でもつぎの瞬間、女は表情を曇らせた。

「あなた、ノボリさんじゃない」
「…はい? なにを、おっしゃっているのです? わたくしは、ノボリにございますよ?」
「違う! あなた、クダリさんでしょ! そうよ、クダリさんだわ。私にはわかる」

 ……なんなの、こいつ。なんでわかったの。

「わたくしには、なにがなんだかさっぱり…」
「いいえ、あなたはクダリ。…私の妹が、愛した人」

 い、もうと……?

「あなたはもう、おぼえてはいないのでしょうね。妹の…ユーリの名を」
「…ユー、リ…」

 かたときも忘れたことなんて、なかった。ぼくの目のまえで強姦されて、むざんな遺体となって発見された、愛しい愛しいぼくのユーリ。

「ユーリの、お姉…ちゃん…?」
「当時は入院していたし、あなたとは、会ったこともなかったわね。でも、いつも遠くから見ていたのよ、あなたとユーリのこと」
「ユー、リ…」

 ユーリと目のまえの女の顔がかさなって見えて、ぼくは無意識に、女を抱きしめていた。

「ずっと、ユーリを想っていてくれたのね。ありがとう」
「忘れられなかった…! ユーリが助けてっていう声、悲鳴…! ずっと、耳にこびりついてるんだ…!」
「ユーリも、あなたにありがとうってつたえてくれって…。私を忘れないでいてくれて、ずっと苦しめてごめんねって…」
「…え?」

 肩をつかみ、顔を見る。

「いるのよ、ずっと。あなたのそばで、あなたを見守ってたの、ユーリは」





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