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Wat's your name?

【寂しさの夕間暮れ】

「アチャモ、おいで」

 まだ、希望に満ちあふれていたころ。近所のポケモン博士からいただいたアチャモは、よきパートナーだった。
 彼女は順調に成長して行き、他の手持ちポケモンたちもまた、じゅんちょうに育って行った。ジムや、四天王にもいどんだ。
 旅にでてから、1年。私はとうとうポケモンマスターにまで登りつめ、その喜びもつかの間。すぐに、新しい土地へとふみだそうとした。だが。
 私の不注意によって、特にかわいがっていたピカチュウが、耳を負傷した。彼のケガはひどく、耳を3分の1ほど、切除しなければならないという。

「ごめんね、ごめんね…」

 大つぶの涙をながす私に、ピカチュウは、優しく……今まで通りにせっした。だから、自分を責めるしかなく。彼が退院してすぐ、故郷へと帰った。

「私、もうトレーナーは辞める」

 こんなつらい思いをするなら、辞めてしまおう。そう思っていたし、これ以上、ピカチュウたちをつらい目に遭わせたくない。
 そして、ボックスにポケモンを永久に預けることにした。封印して……おくはずだったのに。



「久しぶりだね、アイリちゃん。…いや、もうりっぱなレディなんだから、アイリさん…かな」
「センリさん?」

 ずいぶんと、なつかしい顔。あの時はまだ10歳だったから、約20年ぶりか。

「なにかご用ですか?」
「本当に、結婚したんだね」
「ええ。娘もいますよ。もうすぐ11歳になります」

 ポケモントレーナーを辞めてから5年後に、ポケモン画家をしていた夫と知り合った。そして、20歳で結婚。21で子供を産んだ。

「娘さん、今日いないみたいだね。逢ってみたかったな。僕にも、同じ年ごろの娘がいるものでね」
「そうでしたか。…今日はしょうしょう、トキワまで買い物をたのんだんです」

 マサラからトキワまで行くのには、どうしても、草むらを歩かなければ行けない。だから、ポケモンを持っていない娘には、行かせたくなかったのだけれど。

「どうしても行くと言って聞かないので、ピカチュウを連れて行かせました」

 トレーナーを辞めこそしたものの、やはり、だいじに育てた手持ちの6匹……ピカチュウ・サーナイト・ヨルノズク・ペリッパー・フライゴン・バシャーモだけは……手ばなせなかった。他の子は、すべて他人にあげてしまったが。

「あれ、でもたしか君のピカチュウ…」
「レベルで言ったら、100位です。しかも、私以外にはなつかない」

 でも、もし娘が……私がどんなに反対しても、トレーナーになりたいと言ったら。

「私の娘ですから、たぶん、ポケモントレーナーになりたいと思っているはず。ならば、あの子にチャンスをあげたい」

 あのピカチュウを少しでもあつかえるのならば、あの子には才能があるはずだ。

「私がつらいことと、あの子の人生は別。自由にさせてあげないと」

 苦笑いを返すと、センリさんが、まぶしそうに微笑む。



※夕間暮れ
夕方、薄暗くてよく見えないこと



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